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『騙し絵の牙』

騙し絵の牙

発売されてすぐ買ったわりに、なかなか読めずにいた『騙し絵の牙』を読みました。

ほぼ毎日の様に肩と首の痛みに悩まされている身としては、ハードカバーの小説を読むというのは結構な負担になるし、性格上、読み始めた本はなるべく一気に読んでしまいたいものですから、それなりにうってつけの日を選びたいというのがありましたので。

 

カバーに大泉洋。本の中にも章ごとの表紙に大泉洋。

俳優・大泉洋を主人公に「あて書き」した異色作。ファンなら読まない訳がない。

「あて書き」とお墨付きを頂いているので、主人公が登場したらそれは即「大泉洋」の姿で思い浮かべましたし、それに違和感が全くなかったから、なるほどこれが「あて書き」というものかと感心したりもしました。

 

動く大泉洋を想像しながら読むという点で凄く楽しめた作品でしたが、内容そのものは想像以上にシビアなものでした。

衰退する出版業界と組織に翻弄される主人公・速水輝也。編集長を務める雑誌の廃刊の危機、冷え切った夫婦関係、裏切り、取り返しのつかない喪失…景気の好い話なんて殆どないもんだから気持ちは重くなりがち。

 

その中で速水がモノマネを披露するシーンに思わず笑ったり、大物作家を説得出来た時にホッとしたり…というのはあっても、基本的には「厳しいなぁ…」と、まぁこれは出版業界に限った事じゃなくてどこも似たり寄ったりなんだろうなとも思うから、現実をリアルに突き付けられている様で辛かったです。

 

一体何が騙し絵の牙なのよ。こっからどう逆転するのよ…と待ち続けて、あの演説のシーンで「これだ、ここがクライマックスだ」と終盤には涙すら出たというのに、結局、雑誌は廃刊となり、速水は会社を去る…。

終章ですよ?男の敗北の物語なのかとあ然としましたよ?

 

カタルシスは、エピローグにあった訳ですけどね。

 

「自分はなぜ編集者という人生を選んだのか」

 

速水の自問に対する答えはエピローグにあり、登場人物達も、読者も、皆が速水という男にすっかり騙されていた事を知る。いや、騙すというと聞こえが悪いけど、そう、「騙し絵」というのが一番しっくり来る。

 

『騙し絵の牙』、読み終わってみれば、このタイトルの通りだったという訳。

最近読書から離れていたし、こういう社会派の小説は凄く久しぶりだったけど、面白かったです。一気に読み進めて行く吸引力のある作品でした。

 

あて書きされるくらいだから、もし映像化の話があったら当然大泉さんが速水役ですよね。そうですよね。もし他の人になったらモノマネのシーンどうするのよ!(笑)。

 

ちなみに速水以外は誰か役者を思い浮かべながら読むという人物はなくて、みんな何となくのイメージで想像していたんですが、一人だけ、息をする様に自然に役者が浮かんで来る人物がいましたねぇ。

 

秋村光一、コレは完全に安田顕でしょう。速水と同期で正反対のキャラ。

どうなんだろ、作者の塩田武士センセ、彼も実はあて書き…って事は?

 

映像化、期待しちゃうなぁ(笑)。

 

本・小説 comments(0) - ノリアン
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